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جميل وبثينة ジャミールとブサイナ 1
أَبُو عَمْروٍ جَمِيلُ بْنُ عَبْدِ ٱللهِ ٱلشَّاعِرُ |
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アブー・アムルことジャミール・ブン・アブドゥッラー、有名 |
ٱلْمَشْهُورُ صَاحِبُ بُثَيْنَةَ أَحَدُ عُشَّاقِ |
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な詩人、ブサイナ(女性の名)の相手、アラブの熱愛者の1人、 |
ٱلْعَرَبِ عَشِقَهَا وَهُوَ غُلَامٌ فَلَمَّا كَبِرَ خَطَبَهَا |
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子供のときから彼女に恋をし、大人になったとき彼女を求めて求婚したが、 |
فَرُدَّ عَنْهَا فَقَالَ ٱلشِّعْرَ فِيهَا |
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(親族に)拒否された。それで彼女のことを詩に詠んだ。 |
وَكَانَ يَأْتِيهَا سِرًّا وَمَنْزِلُهَا وَادِى ٱلْقُرَى |
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彼女のところに密かに通っていた。彼女の家はワーディー・クラーにあった。 |
وَدِيوَانُ شِعْرِهِ مَشْهُورٌ فَلَا حَاجَةَ إِلَى ذِكْرِ |
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彼の詩集は有名で、それについては何も述べる |
شَىْءٍ مِنْهُ |
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必要はない。 |
ذَكَرَهُ ٱلْحَافِظُ ٱبْنُ عَسَاكِرَ فِى تَارِيخِ |
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ハーフィズ(コーラン暗誦者)のイブン・アサーキルが |
دِمَشْقَ |
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『ダマスクス史』の中で述べているが、 |
وَقَالَ قِيلَ لَهُ لَوْ قَرَأْتَ ٱلْقُرْآنَ كَانَ أَعْوَدَ |
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いわく、ある人がジャミールに言った。もしあなたがコーランを勉強していたら |
عَلَيْكَ مِنَ ٱلشِّعْرِ فَقَالَ هٰذَا أَنَسُ بْنُ مَالِكٍ |
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それは詩より有益だっただろう。すると彼は言った。あれはアナス・ブン・マーリク(神が彼に満足し給うように) |
رَضِىَ ٱللهُ عَنْهُ أَخْبَرَنِى أَنَّ رَسُولَ ٱللهِ |
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だったか、私にこう告げた。神の使徒は(彼に神の祝福と平安がありますように) |
صَلَّى ٱللهُ عَلَيْهِ وَسَلَّمَ قَالَ إِنَّ مِنَ ٱلشِّعْرِ |
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こう言われた。詩の中にもある種の知恵が |
لَحِكْمَةً |
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ある。 |
وَجَمِيلٌ وَبُثَيْنَةُ كِلَاهُمَا مِنْ بَنِى عُذْرَةَ |
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ジャミールとブサイナは2人ともウズラ部族の出である。 |
وَكَانَتْ بُثَيْنَةُ تُكَنَّى أُمَّ عَبْدِ ٱلْمَلِكِ |
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ブサイナはウンム・アブドゥルマリクというクンヤ(~の母という呼び名)をつけられていた。 |
وَٱلْجَمَالُ وَٱلْعِشْقُ فِى بَنِى عُذْرَةَ كَثِيرٌ |
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美と恋はウズラ部族には多い。 |
قِيلَ لِأَعْرَاِبِىٍّ مِنَ ٱلْعُذْرِيِّينَ مَا بَالُ قُلُوبِكُمْ |
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ある人がウズラ部族出身のベドウィンに言った。なぜあなたがたの心は |
كَأَنَّهَا قُلُوبُ طَيْرٍ تَنْمَاثُ كَمَا تَنْمَاثُ ٱلْمِلْحُ |
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まるで鳥の心のようで、塩が水に溶けるように溶けるのか。 |
فِى ٱلْمَاءِ أَمَا تَتَجَلَّدُونَ |
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あなたがたは、しっかりしないのか。 |
فَقَالَ إِنَّا نَنْظُرُ إِلَى مَحَاجِرِ أَعْيُنٍ لَا |
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彼は言った。我々はあなたがたが見ない、目の玉の奥(眼窩)を |
تَنْظُرُونَ إِلَيْهَا |
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見ているのだ。 |
وَقِيلَ لِآخَرَ مِمَّنْ أَنْتَ |
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またある人が別の人に言った。あなたはどの部族の出身か。 |
فَقَالَ أَنَا مِنْ قَوْمٍ إِذَا أَحَبُّوا مَاتُوا |
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彼は言った。私は恋するときは命をかける部族の出身です。 |
فَقَالَتْ جَارِيَةٌ سَمِعَتْهُ هٰذَا عُذْرِىٌّ وَرَبِّ |
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それを聞いた娘が言った。カアバの主に誓って、この人 |
ٱلْكَعْبَةِ |
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はウズラ部族の人だ。 |
وَذَكَرَ صَاحِبُ ٱلْأَغَانِى أَنَّ كُثَيِّرَ عَزَّةَ |
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『詩歌の書』の著者は述べている。クサイイル・アッザ(アッザの恋人クサイイル)は |
كَانَ رَاوِيَةَ1 جَمِيلٍ وَجَمِيلٌ كَانَ رَاوِيَةَ |
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ジャミールの伝誦者であり、ジャミールはフドゥバ・ブン・ |
هُدْبَةَ بْنِ خَشْرَمٍ وَهُدْبَةُ رَاوِيَةَ ٱلْحُطَيْئَةِ |
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ハシュラムの伝誦者であり、フドゥバはフタイアの伝誦者 |
وَٱلْحُطَيْئَةُ رَاوِيَةَ زُهَيْرِ بْنِ أَبِى سُلْمَى وَٱبْنِهِ |
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であり、フタイアはズハイル・ブン・アビー・スルマーとその |
كَعْبِ بْنِ زُهَيْرٍ |
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息子のカアブ・ブン・ズハイルの伝誦者である。 |
وَمِنْ شِعْرِ جَمِيلٍ مِنْ جُمْلَةِ أَبْيَاتٍ |
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ジャミールの詩に、すべての詩句から抜粋すると次のようなものがある。 |
وَخَبَّرْتُمَانِى أَنَّ تَيْمَاءَ مَنْزِلٌ |
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あなたがた2人はタイマー(地名)がライラの住まいだと私に告げた |
لِلَيْلَى إِذَا مَا ٱلصَّيْفُ أَلْقَى ٱلْمَرَاسِيَا |
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夏が錨を下ろしたときに |
فَهٰذِى شُهُورُ ٱلصَّيْفِ عَنَّا قَدِ ٱنْقَضَتْ |
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このように夏の数か月は既に私達から過ぎ去った |
فَمَا لِلنَّوَى تَرْمِى بِلَيْلَى ٱلْمَرَامِيَا |
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なのに、なぜ旅立ちはライラを遠くの地に投げたのか |
وَمِنَ ٱلنَّاسِ مَنْ يُدْخِلُ هٰذِهِ ٱلْأَبْيَاتَ فِى |
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人々の中にはこれらの詩句を(別の詩人)マジュヌーン・ライラの長詩に入れる者が |
قَصِيدَةِ مَجْنُونِ لَيْلَى وَلَيْسَتْ لَهُ |
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いるが、これは彼の詩ではない。 |
وَتَيْمَاءُ خَاصَّةً مَنْزِلٌ لِبَنِى عُذْرَةَ وَفِى هٰذِهِ |
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タイマーはもっぱらウズラ部族の住まいであった。この |
ٱلْقَصِيدَةِ يَقُولُ جَمِيلٌ |
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長詩でジャミールはこう詠んでいる。 |
وَمَا زِلْتُمُ2 يَا بُثْنَ3 حَتَّى لَوَ ٱنَّنِى4 |
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ブサイナよ、なぜずっとつれないのか。 |
مِنَ ٱلشَّوْقِ أَسْتَبْكِى ٱلْحَمَامَ بَكَى لِيَا |
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私が慕情のため鳩に同情を求めると 私のために鳩は泣いてくれるのに |
وَمَا زَادَنِى ٱلْوَاشُونَ إِلَّا صَبَابَةً |
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私を非難する者も、私の慕情を増すだけだった |
وَلَا كَثْرَةُ ٱلنَّاهِينَ إِلَّا تَمَادِيَا |
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大勢の妨げる者も、私の忍耐を増すだけだ |
وَمَا أَحْدَثَ ٱلنَّأْىُ ٱلْمُفَرِّقُ بَيْنَنَا |
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私達の間を隔てている遠さも忘却を引き起さなかった |
سُلُوًّا وَلَا طُولُ ٱللَّيَالِى تَقَالِيَا |
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互いに会う夜が隔たっても 心変わり(憎しみ)を引き起こさなかった |
أَلَمْ تَعْلَمِى يَا عَذْبَةَ ٱلرِّيقِ إِنَّنِى |
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あなたは知らないのか、唾の甘き者よ、 |
أَظَلُّ إِذَا لَمْ أَلْقَ وَجْهَكِ صَادِيَا |
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私があなたの顔に会わないとき、いつも渇いていることを |
لَقَدْ خِفْتُ أَنْ أَلْقَى ٱلْمَنِيَّةَ بَغْتَةً |
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私は不意に死に直面することを怖れた |
وَفِى ٱلنَّفْسِ حَاجَاتٌ إِلَيْكِ كَمَا هِيَا |
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私の心が―いつもそうであるが―あなたを求めているときに |
وَكَانَ كُثَيِّرُ عَزَّةَ يَقُولُ جَمِيلٌ وَٱللهِ أَشْعَرُ |
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アッザの恋人クサイイルは言っていた。 |
ٱلْعَرَبِ حَيْثُ يَقُولُ |
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ジャミールは |
وَخَبَّرْتُمَانِى أَنَّ تَيْمَاءَ مَنْزِلٌ |
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「あなたがた2人はタイマーがライラの住まいだと 私に告げた |
لِلَيْلَى إِذَا مَا ٱلصَّيْفُ أَلْقَى ٱلْمَرَاسِيَا |
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夏が錨を下ろしたときに」 の詩を詠んだとき、 アラブの最も優れた詩人である。 |
وَمِنْ شِعْرِهِ |
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彼の詩にはまた次のものがある。 |
إِنِّى لَأَحْفَظُ سِرَّكُمْ وَيَسُرُّنِى |
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私はあなたとの秘密を守る |
لَوْ تَعْلَمِينَ بِصَالِحٍ أَنْ تُذْكَرِى |
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あなたが心から思われていることを 知ってくれたらうれしいのだが |
وَيَكُونُ يَوْمٌ لَا أَرَى لَكِ مُرْسَلًا |
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あなたの使いを見ることがない1日 |
أَوْ نَلْتَقِى فِيهِ عَلَىَّ كَأَشْهُرِ |
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また私達が会うことのない1日は私には数か月のようだ |
يَا لَيْتَنِى أَلْقَى ٱلْمَنِيَّةَ بَغْتَةً |
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むしろ、ふいに死に出会うことができればよいのに |
إِنْ كَانَ يَوْمُ لِقَائِكُمْ لَمْ يُقْدَرِ |
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もしあなたに会う日ができないならば |
وَمِنْهَا |
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また |
يَهْوَاكِ مَا عِشْتُ ٱلْفُؤَادُ وَإِنْ أَمُتْ |
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私が生きている限り、私の心はあなたを恋い慕う |
يَتْبَعْ صَدَاىَ* صَدَاكِ بَيْنَ ٱلْأَقْبُرِ |
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もし私が死んでも、私の幻影が墓を隔てて あなたの幻影を追う |
وَمِنْهَا |
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また |
إِنِّى إِلَيْكِ بِمَا وَعَدْتِ لَنَاظِرٌ |
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私はあなたが約束してくれたことを期待している |
نَظَرَ5 ٱلْفَقِيرِ إِلَى ٱلْغَنِىِّ ٱلْمُكْثِرِ |
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貧しい者が富める者の恵みを期待しているように |
يُقْضَى ٱلدُّيُونُ وَلَيْسَ يُنْجِزُ مَوْعِدَا |
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借金は返すものだ しかし、約束を果たそうとしない |
هٰذَا ٱلْغَرِيمُ لَنَا وَلَيْسَ بِمُعْسِرِ |
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この負債者は 貧しくもないのに |
مَا أَنْتِ وَٱلْوَعْدُ ٱلَّذِى تَعِدِينَنِى |
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あなたとあなたが私にした約束は |
إِلَّا كَبَرْقِ سَحَابَةٍ لَمْ تُمْطِرِ |
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雨を降らせない雲の稲妻のようなものにほかならない |
وَمِنْ شِعْرِهِ مِنْ جُمْلَةِ قَصِيدَةٍ |
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長詩全体のうちの彼の詩の中に、次のようなものがある。 |
إِذَا قُلْتُ مَا بِى يَا بُثَيْنَةُ قَاتِلِى |
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ブサイナよ、どういうわけで私は 恋の悩みに死にそうなのだろうと言ったとき |
مِنَ ٱلْوَجْدِ قَالَتْ ثَابِتٌ وَيَزِيدُ |
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彼女は言った その悩みはいつまでも続いてますます激しくなるのですね |
وَإِنْ قُلْتُ رُدِّى بَعْضَ عَقْلِى أَعِشْ بِهِ |
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私の理性をいくらかでも返してくれ、 それで生きていけるだろう、ブサイナよと言ったとき |
بُثَيْنَةُ قَالَتْ ذَاكَ مِنْكَ بَعِيدُ |
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彼女は言った それはあなたから遠くにあってできないと |
وَمِنْ شِعْرِهِ أَيْضًا |
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また彼の詩に次のものがある |
وَإِنِّى لَأَرْضَى مِنْ بُثَيْنَةَ بِٱلَّذِى |
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私はブサイナからのことに満足する (私達の間のことを)非難する者が |
لَوِ ٱسْتَيْقَنَ ٱلْوَاشِى لَقَرَّتْ بَلَابِلُهْ |
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確信したら(本当のことを知ったら)、 その者の不安が静まるような(ささいな)ことで |
بِلَا وَبِأَلَّا أَسْتَطِيعُ وَبِٱلْمُنَى |
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(彼女の)否とかだめだとか言うことでも、 |
وَبِٱلْأَمَلِ ٱلْمَرْجُوِّ قَدْ خَابَ آمِلُهْ |
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希望でも、望む者が失望した願いでも |
وَبِٱلنَّظْرَةِ ٱلْعَجْلَى وَبِٱلْحَوْلِ تَنْقَضِى |
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瞬間の一目でも、 最初も最後も(初めから終わりまで)私達が会わないまま |
أَوَاخِرُهُ لَا نَلْتَقِى وَأَوَائِلُهْ |
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過ぎ去っていく1年でも (私は満足できる) |
1 ة が付いているが男性名詞としても使う |
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(2に続く) |
2 「つれない」という意味の動詞が省かれていると考える |
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3 بُثَيْنَةُ はبُثْنَةُ の縮小形なので、元の形を使った呼びかけ(省略形) |
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4 لَوَ ٱنَّنَى < لَوْ أَنَّنِى |
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5 نَظَرَ は動詞ではなく動名詞の対格