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さまざまなことわざ1
<1>
لَا تَكُنْ حُلْوًا فَتُسْتَرَطَ وَلَا مُرًّا فَتُعْقِىَ |
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「甘くなるな、さもないと飲み込まれる、苦くなるな、さもないと吐き出される」 |
اَلِٱسْتِرَاطُ ٱلِٱبْتِلَاعُ وَٱلْإِعْقَاءُ أَنْ تَشْتَدَّ |
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استراط は「飲み込むこと」である。إعقاء は「ものの |
مَرَارَةُ ٱلشَّىْءِ حَتَّى تُلْفَظَ لِمَرَارَتِهِ |
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苦さが、苦さのため吐き出されるほど強いこと」である。 |
وَبَعْضُهُمْ يَرْوِى فَتُعْقَى بِوَزْنِ فَتُسْتَرَطَ |
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ある人はفَتُسْتَرَطَにならって(受動態で)فَتُعْقَى と言うが、 |
وَٱلصَّوَابُ كَسْرُ ٱلْقَافِ يُقَالُ أَعْقَى ٱلشَّىْءُ |
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正しくはق をカスラ(i音)で読み、أعْقَى ٱلشَّىْءُ と言う1。 |
وَٱلمَعْنَى لَا تَتَجَاوَزِ ٱلْحَدَّ فِى ٱلْمَرَارَةِ |
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ことわざの意味は、「苦さの限界を超えるな、 |
فَتُرْمَى وَلَا فِى ٱلْحَلَاءِ فَتُبْتَلَعَ |
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さもないと捨てられる、甘さの限界を超えるな、さもないと飲み込まれる |
أَىْ كُنْ مُتَوَسِّطًا فِى ٱلْحَالَيْنِ |
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すなわち、二つの状態の中間であれ」 |
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1 Ⅳ形の能動態で「ものが苦すぎる」という意味になる |
<2>
لَا آتِيكَ مَا دَامَ ٱلسَّعْدَانُ مُسْتَلْقِيًا |
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「サアダーン(植物の名)が横ばいに生えている限り、私はあなたのところには来ない」 |
قِيلَ لِأَعْرَبِىٍّ كَرِهَ ٱلْبَادِيَةَ |
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沙漠を嫌ったあるベドウィンに誰かが次のように言った。 |
هَلْ لَكَ فَى ٱلْبَادِيَةِ |
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あなたは沙漠をどう思うか。 |
قَالَ أَمَّا مَا دَامَ ٱلسَّعْدَانُ مُسْتَلْقِيًا فَلَا |
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彼は言った。サアダーンが横ばいに生えている限り、 |
قَالُوا وَكَذَا يَنْبُتُ ٱلسَّعْدَانُ |
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人々が言うには、サアダーンはこのように生えるものである。 |
<3>
لَا تَنْهَ1 عَنْ خُلُقٍ وَتَأْتِىَ2 مِثْلَهُ |
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「自分で同じようなことをしながら人の癖を禁じるな」 |
يُنْشَدُ فِى هٰذَا ٱلْمَعْنَى |
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この意味で詩が詠まれている。 |
إِذَا عِبْتَ أَمْرًا فَلَا تَأْتِهِ |
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あることを非難するなら同じことを行うな |
فَذُو ٱللُّبِّ مُجْتَنِبٌ مَا يَعِيبُ |
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分別ある者は自分が非難するものを避ける |
1 نَهَى の2人称男性要求法 |
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2 同時性のوと接続法 |
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<4>
هَرِقْ1 عَلَى جَمْرِكَ مَاءً |
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「あなたの炭火に水を注げ」 |
يُضْرَبُ لِلْغَضْبَانِ أَىِ ٱصْبُبْ مَاءً عَلَى |
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怒っている人に対して用いられる。すなわち「あなたの |
نَارِ غَضَبِكَ |
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怒りの火に水を注げ」 |
1 完了形هَرَاقَ という形の動詞 (4形の動詞أرَاقَ と同じ意味) 未完了形はيُهَرِيقُとなり、命令形がこの形。 |
<5>
أَطْعِمْ أَخَاكَ مِنْ عَقَنْقَلِ ٱلضَّبْ1 |
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「あなたの兄弟に トカゲの胃袋にあるものを食べさせよ |
إِنَّكَ إِنْ تَمْنَعْ أَخَاكَ يَغْضَبْ |
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あなたがそれを拒むなら彼は怒るだろう」 |
عَقَنْقَلُ ٱلضَّبِّ كَرِشُهُ وَهُوَ مِعًى مِنْ |
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عقنقل الضب とはトカゲの胃のこと、消化器官の一つ、 |
أَمْعَائِهِ فِيهِ جَمِيعُ مَا يَأْكُلُهُ |
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その中に食べたものすべてがある。 |
يُضْرَبُ مَثَلًا فِى ٱلْمُوَاسَاةِ |
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慰めに関してことわざとして用いられる。(意味がはっきりしませんが、諸説あるようです) |
1 本来はالضَّبِّ であるが韻を踏ませるため重子音を省略している |
<6>
فَلِمَ رَبَضَ ٱلْعَيْرُ إِذَنْ |
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「それではなぜ、野ロバが横たわったのか」 |
قَالَهُ ٱمْرُؤُ ٱلْقَيْسِ لَمَّا أَلْبَسَهُ قَيْصَرُ |
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それを言ったのはイムルウ・ル・カイスで、ビザンツ皇帝が |
ٱلثِّيَابَ ٱلْمَسْمُومَةَ وَخَرَجَ مِنْ عِنْدِهِ |
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彼に毒を塗った服を着せ、彼が皇帝のもとから出て |
وَتَلَقَّاهُ عَيْرٌ |
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野ロバと会ったときである。 |
فَرَبَضَ فَتَفَاءَلَ ٱمْرُؤُ ٱلْقَيْسِ |
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そのとき野ロバが横たわり、イムルウ・ル・カイスは兆しを感じた。 |
فَقِيلَ لَا بَأْسَ عَلَيْكَ |
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誰かが彼に言った。心配なさるな。 |
قَالَ فَلِمَ رَبَضَ ٱلْعَيرُ إِذَنْ أَنَا مَيِّتٌ |
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彼は言った。それではなぜ、野ロバが横たわったのか。私は死ぬのだ。 |
يُضْرَبُ لِلشَّىْءِ فِيهِ عَلَامَةٌ تَدُلُّ عَلَى |
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これはあなたに言われたこととは違うものを示す印が |
غَيْرِ مَا يُقَالُ لَكَ |
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あることについて用いられる。 |
<7>
لِكُلِّ عُودٍ عُصَارَةٌ |
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「どの木にも汁がある」 |
اَلْعُصَارَةُ مَا يَخْرُجُ مِنَ ٱلشَّىْءِ إِذَا عُصِرَ |
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عصارة は絞られたときに、物から出るものである。 |
إِنْ حُلْوًا فَحُلْوٌ1 وَإِنْ مُرًّا فَمُرٌّ |
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もしその物が甘ければ絞ったものも甘く、苦ければ苦い。 |
أَىْ لِكُلِّ ظَاهِرٍ بَاطِنٌ |
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すなわち、すべての外側には内側がある。 |
1إِنْ كَانَ ٱلشَّىْءُ حُلْوًا فَمَا يَخْرُجُ مِنْهُ حُلْوٌ と解釈される |
<8>
هَلْ يَخْفَى عَلَى ٱلنَّاسِ ٱلْقَمَرُ |
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「月は人に隠されているだろうか」 |
يُضْرَبُ لِلْأَمْرِ ٱلْمَشْهُورِ |
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これは良く知られているものに用いられる。 |
قَالَ ذُو ٱلرُّمَّةِ |
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ズー・ルンマは次のように詩を詠んだ。 |
وَقَدْ بَهَرْتَ فَمَا تَخْفَى عَلَى أَحَدٍ |
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あなたは輝いた 誰にも隠されていない |
إِلَّا عَلَى أَحَدٍ لَا يَعْرِفُ ٱلْقَمَرَا |
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月を知らない者以外には |
<9>
مَنْ يَسْمَعْ يَخَلْ |
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「聞く人はそう思う」 (1人称完了形は)خِلْتُ 、 |
يُقَالُ خِلْتُ إِخَالُ بِٱلْكَسْرِ وَهُوَ ٱلْأَفْصَحُ |
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(未完了形の語頭母音はカスラで)إِخَالُ と言われ、それがより純粋(なアラビア語)である。 |
وَبَنُو أَسَدٍ يَقُولُونَ أَخَالُ بِٱلْفَتْحِ |
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バヌー・アサド族はファタハ(a音)でأَخَالُ と言うが、 |
وَهُوَ ٱلْقِيَاسُ |
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それは(アラビア語文法の)規則通りである。 |
اَلْمَعْنَى مَنْ يَسْمَعْ أَخْبَارَ ٱلنَّاسِ |
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ことわざの意味は「人々の噂や非難を聞く者は |
وَمَعَايِبَهُمْ يَقَعْ فِى نَفْسِهِ عَلَيْهِمِ ٱلْمَكْرُوهُ |
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彼らに対して不愉快な気持ちが心に生じる」ということ。 |